介護はつらいのよ

幸せな人生の方程式

私は子供の頃、父が大好きで、周りの方たちからはよくお父さん子だと言われていた。しつけに厳しい母に比べて、ほとんど父に怒られた記憶はなく、父が長期で海外出張に行った時に母に怒られた時なんて、ベランダで空に向かって泣きながら「お父さん」と呼んだこともあったっけ。親が可愛がり過ぎるとお嫁に行けないなんておばさんたちに言われたけど、おばさんたちの予言どおりに40過ぎてもお嫁に行かず、喧嘩をしながらも笑いにあふれた毎日を両親と送っている。

今年で78歳になる父。そんな父が、数日前に寝ている時に足をつってしまい、うまく起き上がれずに足を負傷してしまった。その時は母と二人で必死に起き上がらせ、ひとまず家の中を移動するぶんには支障がないので家で様子を見ていたのだが、今日、部屋から呼ぶ声が聞こえたので行ってみると、床に寝そべっている父。えっ、何が起こったの?

なんと、リクライニングソファーから落っこちたそう。母と二人がかりで起き上がらせようとするも、どうしても足がすべってしまってビクとも動かない。救急車を呼ぶべきかどうしたものかと頭を抱え、地域のケアプラザの看護師さんに教えていただいた#7119という救急相談センターにまずは自宅の固定電話で電話してみたのだけれども、この電話番号は現在使われておりませんと。

電話がつながらない理由はよく分からないけど、やっぱり救急車を呼んでいいか分からないので、ひとまずそのまま床に布団を敷いて、布団に横になって様子を見てみることにした。そして数時間、布団で横になっていたのだが、父の部屋からまた呼ぶ声が聞こえてきた。行ってみると、自分で立とうとしてもがいている。自分で起き上がろうとしないでって言ったじゃんかと言いたい気持ちを抑え、再び母と二人で起き上がらせようと奮闘したが、足がすべってまたもや立ち上がらせることはできない。もう救急車を呼ぶしかないかもと、出かける準備のためにトイレに入っていた時に、あるアイデアが頭に浮かんできた。お風呂のすべり止め用のマットを敷いてもう1回チャレンジして、もし駄目だったらいよいよ救急車を呼ぼうと。

父の足の下にすべり止めマットを敷いて、両手を引っ張り上げてみる。すると、これが効果てきめん。足がすべらないので自分で踏ん張ることができ、立ち上がることに成功した。その時の気持ちといったら、子供が歩いた時ぐらいにうれしかったですよ。起き上がった後は、父は自分の足で歩くことができて、足以外は特段何も症状がなかったので、ひとまずまた様子見をすることにした。

以前も父が夜中に立てなくなって、その時は兄がいとも簡単に起き上がらせてくれたことがあった。でも、今回は兄が出張で不在にしており、おばあちゃんとおばちゃんの2人で奮闘せざるを得なかったのだが、こういう時に実感する。男手は必要だと。そして、介護職の方々の大変さを身にしみて実感した。優しくお年寄りに寄り添いながらケアをしている皆さんに、ただただ頭が下がるだけ。本当にありがとうございます。

立ち上がることができずに落ち込んでいる父の姿は、正直見ていてうれしいものじゃない。スーツを着て颯爽と出勤していた父、子煩悩で優しい父、私はそんな父を自慢に思っていた。父から言われた忘れられない言葉がある。テストで高得点を取った友達が、ごほうびにお小遣いをもらったという話を聞いたので、私も父にテストのごほうびにお小遣いをほしいと言ってみると、「勉強は自分のためにするものだ」と一蹴された。このリアクションは、私にとってはすごく意外なものだった。なぜなら、父は普段からすこし甘えるだけでお小遣いをくれていたから、この時も楽勝でもらえるかと思っていた。でも父のこの言葉は、お小遣い以上に価値のある言葉として私の心に刻まれている。そのとおり、勉強は自分のためにするものだよね。

父にはできるだけ長生きしてほしいし、子供が大好きな父には、ぜひひ孫の顔まで見てほしいと思う。まあ、孫の顔すら見せてない私が言うなって自分でも思うけど、甥っ子たちにはぜひ素敵な人と出会って、かわいい子供たちに恵まれることを願っているよ。あなたたちの写真を眺めては目をうるませているじいじのためにも、幸せな人生を歩んでください。

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